小詩 二篇/為平 澪
「母」
「家庭に光を灯して共に」
煽り文句は便利なコトバ
その言葉をバーゲンセールで買った母
巨大な塔を一つ、造ってみないか、と
安請け合いした黒い声が
赤く点り、二つ連なり、
三つめに爆発して、「僕」
僕に左手なく右足なく
麻痺した舌で 母に届くコトバもなし
五体満足な母が
何でもいいから
言いたいことがあれば
ここに書いてごらん、と
見せつづける白紙
真っ黒に裏打ちされてしまった
僕のコトバ、僕だけの声
僕は 塔の上で笑っている、
キレイな白紙ばかり見せる母に
今日もペンを投げつける
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