かなしみ/前田ふむふむ
 
                

夕日が地平に没しても
なお 街々の西の空が
かすかに明るみをおびている
足を止めて
やや赤みがかった
仄白いものを
見ていると
無性に泣きたくなってくる
そのかなしみは
わたしの影だ
      
あの明るさのむこうでは
花も木も風も
声をあげることはない
生きた足跡を
否定されて
泥のように 沈んだものたちが
ふりかえっている
そして
冬のイチョウのように
ざわめきもせず
なんの弁明もなく
清々しいほどに 立っている
そのまなざしは
わたしの影だ

わたしが
傷口を嫌い
捨ててきたしがらみ
無為に
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