合格祈願/服部 剛
 
湯島天神の境内に入り
石段で仰いだ空の雲間から
顔を出す
しろい輪郭のお天道様が
遥かな距離を越えて
この頬を温める

あぁ、皿回しの利口なお猿さんが
師匠に手を引かれ
ひょこひょこ去ってゆく

あぁ、本堂の太鼓と笛は鳴り響き
紋付き袴と白無垢の新郎新婦は
中へ、吸い込まれゆく

 梅の花ひとひら
 石畳に、舞い

どうしてこんなに重いのか
人間達のぶら下がる
無数の絵馬に、吹く風の
からころ…と鳴る、瞬時の歌よ

遠い空の北国では
かわいい姪が
十日後に
受験という名のリングに上がる

石畳の階段を下りながら、僕は
合格祈願のお守りを
胸の内ポケットに入れた  





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