息子の見舞い/服部 剛
二年前にこども医療センターで行われた
ダウン症をもつ書家・金澤翔子さんとお母さんが
講演する写真が、廊下に貼られていた
(写真の隅には、ダウン症児の
息子を肩車する僕と、隣の椅子に座る妻)
その日に書いた「共に生きる」の
優しく力強い文字は、写真の上に展示され
僕はいつもひと時見上げてから
(よし…!)と気を入れて
入院中の息子が待つ病室へと歩く
廊下 を歩きながら、翔子さんの
「共」の字が、脳裏に浮かぶ
いのちの宿る「共」の字は
二人三脚のぎこちなく楽しい歩行のようで
夫婦も親子も友達も
〈ふたりでひとり〉であることを
今日も密かに語っています
思いを巡らせながら歩く内…息子の病室に着いた
若い介護の兄さんが、介助していた
「ありがとう、やりますよ」
にこり、と立つ兄さんと入れ代わり
座ったパパは、息子の目をまっすぐに見て
食事の介助を始めた
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