月夜の警報/坂本瞳子
 
遠くで響くサイレンの吹鳴に想いを馳せる
少し興奮を覚えると共に罪悪感も抱く
こんな真夜中になにが起きているのだろうかと
妄想が尽きることはないのだが
自らの想像の貧弱さに吐き気を催す
最低最悪の事件を描いてみようなどとするけれど
三文記事にも到達しない
ありきたりで下世話で稚拙な恋愛模様が
走馬灯のごとくにめぐるばかり
それでも眠ることを忘れる言い訳には丁度よく
ペンを走らせ続ける詭弁ともなる
誰に頼まれたわけでもないけれど
月が輝く夜だからこそ気持ちが落ち着かない
それは我が身ばかりではないようだ
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