電話線は何色/
 
もがいて繋げた糸
11桁の数字の羅列と見えない電波に縋ってみたくなる
電話口の音声は合成音だと誰かが言っていたけれど
匿名の 顔も見えないその声が鼓膜を震わせて
すとんと胸のあたりに落ちたとき じわりと温度を感じた

嘘にしたくないんです その熱を
か細くて でも確かに繋がっていた糸の色が赤だったと信じてみるくらいいいでしょう
はさみで切らないでいてくれてよかった

長かった夜が終わりを告げる瞬間がそこにあった
運命なんて信じなかったのに
無数に枝分かれした道を歩いてきて
あの時ダイヤルを回さなかった並行世界のあたしがきっとどこかで泣いている

苦いコーヒーを淹れて 加湿器に水を足す
今は軽口を叩く声が記憶とかちりと合う
その瞳が蜂蜜みたいな甘さをたたえているなんて知らなかったね

電話してもいいですか
ひとりの仄暗い闇はやっぱり寂しいから
あなたの声で今日も夜を終わらせてほしい
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