戦争/田中修子
 
ある日ふとおかあさんとおとうさんに
問わずにはいられなかった

「戦争ってそんなに悪いことなの?」
「当たり前のことも分からないなんて、そんな教育をした覚えはありません!」
「僕たちが平和のためにどれだけ戦っているか 分からないのか!」

ピシャリと閉じた
閉じられたドアのこっちで唇をかんだ

かわいい絵本を卒業したころ 見せられたもの

原爆で黒焦げになった死体
ケロイド
ナパーム弾で焼けた子ども
ホルマリン漬けの赤ちゃん
放射線で死んでゆく村

そんなのばかり
目を閉じられない

ひとってこんなにきたないことができるのならば
戦争が起きて ひとはぜん
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