エロスと憧憬/白島真
*エロス
熱い唇が夜に溶ける
重ねた皮膚は
殻のないぬめやかな二枚貝
弄ばれた魂が
半周遅れの月影に
しろい波濤を刻んでいる
脱ぎ捨てられた衣に
まだ残る体温が
生温い喘ぎの風となるとき
あなたへの想いは
サテュロスの半身を
しずかに抱擁する
*憧憬
おはよう空
かつての生者の
かなしみの蒼が溶けている
おはよう空
動かぬものへのあこがれが
俯いたままの視線を輝かせる
おはよう空
ひかりが思索の硝子にさして
ひとつの ひとりの
紗がひらかれていく
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