私だけが見た、私だけが夢見た色彩/北街かな
足跡がしろい泡に食べられてぽむぽふと消えていくから
歩いていたはずのあたしも、はじけた
おかしいなあ昨日のあたしは窓辺で教科書のはじっこを弄りながら誰にもばれないようにみじめに泣いていたのに
髪の毛は、かげろうにひっついて透明に燃えあがり、虹色のインクを振り散らした
歩いてきた道には何篇かの未完成絵が掘り込まれて無残にたたずんでいる
だれにも見られることなく
だれにも褒められることなく
ただ静かすぎるほどにずっと鮮やかなんだ、
七色が
空気が
真昼は頭上でずっと創世記からつづいている
飽きもせずにぐるぐると熱が渋滞している
皮膚がなんども焦げて泡のなかでねこが死んでる
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