花残り月/1486 106
 
脇目も振らずに走ってきたよ
余所見をしている余裕はなかった
家と会社を往復するだけの毎日

ケースに入れたままのギター
若者の音楽を受け付けなくなって
大好きな歌も歌えなくなっていた

しばらく連絡を取っていなかった
あの人のことを思い出したのは
病院からの電話を受けた後

いつでも会えると思っていた
あの人に残された時間は僅か
気付けば三月が過ぎていた

桜の花びらは散る瞬間が一番美しいというけれど
汚く萎れてしまっても夏が来るまで咲いていてほしい
桜の花びらは散る瞬間が一番美しいというけれど
小さく萎れてしまっても秋が来るまで咲いていてほしい



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