泣く鬼/田中修子
 

もっとほんとうに やさしかった あのお顔
わたしの覚えてる あのほほえみ どこいった

-自分で死んだら 地獄へゆきます 先生がそうおっしゃっているのだから
それにあたし 考えるの めんどうくさいの
上の人が 考えなくていいっていうから あたし考えないの-
-あの子たちはね あんなめにあって
命を絶つしか ほかになかった
それでもあの子たち 地獄にゆく、という
あなたがいるつもりの そこ-

かわいそうに お釈迦さま
ぶくぶく太った生き仏さまの
乳房からでる乳で炊いた
お粥を食べてしまわれた

笑いがとまらずにいる血みどろの鬼
慈悲をくださりたい生き仏さま きみわるそうに あとずさり

-なんで何も信じないで生きていけるの-
-信じてるあなた とても 苦しそう-

釜で炒られて 針食わされて 八つ裂きだって さぁどうぞ
からだのいたいのなんて たましいにくらべりゃ たいしたことないわい

お釈迦さま 金にひかる雲の向こう
ふっと視線を逸らされて
とじる天
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