水中花もしくはオフィーリア/石瀬琳々
それはひとつの水だった
ある日流れるようにわたしに注ぎ込んだ
それはひとつの風だった
吹き過ぎてなお心を揺さぶるのは
少女は春の花を摘む
長い髪を肩に垂らし何にも乱されることもなく
少女は白い花を摘む
そして川は流れていた 雪解け水が冷たくて
光ははかなく移ろっていく乾いた水
そこに流れようとしていた 水ではない激流が
花はけなげにも今を盛りに咲こうとして
その花束はその花冠は誰のためのもの
あなたに逢うためにわたしは水を渡った
少女は見知らぬおとこのひとを見るだろう
彼の瞳の奥にはふるえる死の光がある
傷を負って赤い血はまるで花のよ
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