ムーサ、落日。/青木怜二
 
ムーサの指に火を点ける。私は影も形もなく。
灰のふる落日でした。ゆっくりと燃えていました。
土と石の道を歩けなくて。あなたは、
誰ですか、と問う。さらさらと、膝ほどの丈に伸びた草が、風が、光が。誰ですか。

燃えています。落日に濡れたまま。
ムーサの灰ふる、あなたは落日。一歩も歩けないまま、私は、あなたは誰ですか、と問う。草が、
風が。光が。答えは影も形もなく、

、灰です。灰がふります、死ではなく、ムーサ。
灰がふっています。ムーサは死ではなく、灰がふっています。誰ですか。ムーサは、誰ですかと問う、
私は、あなたは、誰ですか、と問う草が風が光が、誰ですか。

ゆっくりと燃えています。影も形もなく。
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