夜/鷲田
遠くから足跡が聞こえる
闇の中で独りでいる時、
その足跡の音は社会の目線に聞こえる
街の空気は有料だ
生きる為には対価を払わなければならない
自然に生きる態度は身勝手な若気の草木に似ている
明るさの中で健やかに育つ無邪気な水
女が一人通り過ぎた
カツカツカツカツと
ハイヒールの音が静寂の夜に響く
微かに身構える時、
緊張に張り巡らされた感覚が自らの存在の在り方を問いている
会話は無い
声は無い
窓を閉める音と、遠くに走る車の音が聞こえる
午前0時の暗闇はただそこにある
夜は時刻を知らない
その癖に暗くなる
自然は天然の鈍さを備えている
夜はたぶ
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