風土/白島真
父、母からの生に自立して
もう己自身がひとつの風土だ
と書いた北の国の詩人がいた
東京育ちのわたしにとって
風土とはどのような意味をもつのだろう
解体され記号化されてゆく現在に
立ちすくみ抗うように
風土はそこに在るものだろうか
戦後の均(なら)された住宅街で生きたわたしにも
東京の原風景のような記憶はある
アメリカザリガニ、手掴みで捕えたあの風土
庭の好きだった無花果を伐採されたあの風土
2B(ばくやく)で缶ピースの兵隊蟻、爆破したあの風土
プラモの戦艦三笠、盥の中で沈めたあの風土
背丈より高い菜の花畑を母と通ったあ
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