間違え/鷲田
遠くに向かって泣く時は、
空は静寂の中に沈んでいる。
ひんやりとした夜の風が吹く。
私の感情はその風に吹かれて彼方に飛んで消えゆく。
12時の暗闇を回る頃、
諦めの遠吠えが響いている。
ただ言葉という形式だけが姿を残す。
魂は悲しみにも喜びにもなり得るのです。
乾いた無色の文字がアスファルトの道中に刻まれている。
記憶を失った街。
凹凸の心情を忘れ去り、
人々は何気ないリズムで赤信号の交差点で立ち止まっている。
躊躇し、
萎み、
もたれ掛かり、
信号の色は無機的に緑に変わる。
今日が暖かくなくて良かった。
暖かかったら私の自意識は溶けていた。
幻影の中に見えたのは単なる儚さだった。
都会の乾燥した空気で育つ道端の草。
踏みして歩く。
魂の間違えを重ねて
人々は前進している。
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