言葉の個人史/葉leaf
 
 それぞれの詩人にはそれぞれの言葉の個人史がある。詩の中で用いる言葉は、かつてどこかで自分が書いた別の詩の中でも固有の位置を占めていたものである。例えば「水」という言葉をかつて別の作品で用いたとする。すると、その作品の文脈の中で「水」という言葉に詩人は固有の意味付けをする。「水」という言葉を新たに書く詩で用いる場合、その以前の意味付けをまとった「水」を用いるのである。詩人はそのようにして様々な作品で「水」という言葉を使うかもしれない。そうすると、それぞれの作品によって意味づけられた「水」という言葉が一つの歴史、系譜を作り上げるのである。
 もちろん、この言葉の個人史の問題は作詩の領域の中に閉じる
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