夜桜幻視/吉岡ペペロ
夜あるくにはこわい道だった
夜桜は昼よりも白くて
ふたりの歩幅はうそをついていた
お葬式のような桜のぼんぼり
好きだとはとても言いだせなかった
血を流したところを抱き締めると
ぼくたちはある晴れた日の休日の
午前のひかりの寂しさのなかにいた
きょう桜は散るだろう
なにかあなたに出来ることを探して
胸を焦がした
ぼくは機嫌よく胸を焦がしていた
きょう桜は散るだろう
風じゃない
空模様じゃない
ただそんな気がしていた
夜あるくにはこわい道だった
夜桜は昼よりも白くて
ふたりの歩幅はうそをついていた
お葬式のような桜のぼんぼり
好きだとはとても言いだせなかった
血を流したところを抱き締めると
ぼくたちはある晴れた日の休日の
午前のひかりの寂しさのなかにいた
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