どこに居るの、沙織。/ホロウ・シカエルボク
 
出たところに、小便器が二つ、個室が二つ、それぞれきちんと仕切られて設けられていた。建物の規模からすれば、きちんとした小奇麗な便所だっただろう。造りが頑丈なのか、建物のいっさいはさほど傷んではいなかった。昔の職人が、時間をかけて丁寧に固めたコンクリートなのだろう。ただ、立地からくる湿気だけはどうしようもなかった―浴室から数えて二つ目の部屋の中に、歳のころは十六、七といったあたりの少女が、浴室側の壁にもたれるように脚を投げ出して座っていた。小柄で、色白で、少し?せ過ぎているという印象で、俯いたところに肩までくらいの長さの髪がかかっているせいで、顔はあまりよく見えなかった。だが、おそらく幸せそうに笑って
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