夜桜/鷲田
 
4月初旬。
朝早く家を出た私は今日の天気を知る由も無く会社へと出かける。
今日が晴れの日だったと知るのはもう陽が暮れた9時前後の月の形であった。
月は丸々と綺麗な楕円をして空に浮いており、
「存在」するとか「主張」するといった傲慢な人間の心情や信条とはかけ離れた姿であった。

夜空の雲は月を隠さず、
月光に照らされ、
ほのかに淡くぼんやりとしていて、
それでいて月は輪郭を保ち、
凛と佇んでいた。

春のある日の日常的な夜には小さな喜びがあった。
帰りに立ち寄るコンビニエンスストアの前の公園の夜桜がそれであった。
桜はライトアップされ、
蛍光灯の光に照らされ、
桜色と
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