花の針/田中修子
あなたは針で
わたしを刺していった
はたちきっかりでいったあなたの
のこしたことば
いくど読み返したことだろう
「あなたにわたしを息づかせるよ」
あなたを愛で殺してしまっただれか
そのだれかはあなたのこと
きっととうに忘れてしまっているだろうに
なんでわたしはひんやりした影を
抱きしめつづけている
「ねえねえねえ
なくしてから気付くなんて
ばかだ」
埃のたつ紙でわたしはいまだ
喉をいためている
この紙のなかにたしかにあなたの息がある
わたしは満開のまま咲き続けるあなたを
うちに棲ませて生きている
「ありったけの花をあげる
消えるまでの涙をあげる」
白い唇を噛んでかかえこんでいる
針の花束
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※「」内は友人の書きのこした言葉です。
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