原風景/鷲田
 
蒼い空気に舞う花弁
春の陽気は暖かく優しい
日常が姿を変える瞬間
冬と春の境目は見えない

季節と同じような
見えない感情に
僕等の喜怒哀楽は
今日も高速に進む

日々が過ぎ去るとは
幻の中で霧を掻き分け
沼地を踏みしめ
呼吸をしながら
前に進むことである

刹那の重なりが
喘ぎを発する
好奇心への没頭は
生き甲斐に煌びやかな装飾を与えている

世界からしたら点でしかない出来事に笑い
空から見たら塵でしかない出来事に悲しみ
宇宙から見たら粒でしかない出来事に怒り
彼方から見たら砂でしかない出来事に喜ぶ

ドラマの風景の正体は
離れた場所には存在せず
一番身近な身の廻りにいる

家族で食べる食事の風景
それは最も幸せな原風景の一つである
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