大きな幸せ/ヒヤシンス
 

 白樺の林を抜けるととても小さな家がある。
 初めて出会った僕らはそこで小さな約束をした。
 暖かくなったらまた会おう。
 毎年初夏になったらまた会おう。

 三度目の初夏僕は彼女にプロポーズした。
 彼女は優しく微笑んでゆっくりと頷いた。
 これからは毎日一緒にいよう。
 年をとっても一緒にいよう。

 幸せは気付かないくらいそばにある。
 そよ風がそっと贈ってくれる。
 悲しみは笛の音に乗って大空へと舞い上がった。

 小さな家の小さなランプに灯りを点し、
 君の愛するレコードを聴こう。
 壁に飾ったペイネが僕らに微笑んでいるよ。
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