時の心/ヒヤシンス
真昼に地を這いまわるいくつもの影を私は踏めずにいた。
流れゆく時までも私のせいで歪めてしまうかもしれない。
私の病はすんでのところで踏みとどまっている。
消えない記憶は墓場まで持っていこう。
人生における迷い事は巻煙草に包んでしまおうか。
吸ってしまえばそれは消えて無くなるかもしれない。
私の病は確実に改善している。
それでも抱えている悩みまで墓場へ持ってゆく気はない。
夢と現実が交互に迫ってくる夜。
深く心に沈潜すれば、都会を歩む驢馬が見える。
静かな息遣いと饐えた匂いが宙を舞う。
真昼の影は闇の中にすっかり土着している。
それでも街路灯に照らされた誰かの影はやはり踏めない。
なぜって流れゆく時だけが私の唯一の味方だから。
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