春の航海/青の群れ
割を歓迎しているんだろうね
マスクの下で止まらないくしゃみへの八つ当たり
踏みつけた草の根は強く育って花を咲かせるけれど、靴擦れした小指が痛かった
何年も前に脱ぎ捨てた制服が強く吹いた風に飛ばされても追いかけることもない
ただ進まぬ船の櫂を漕ぎつづけることに違和感を持たずにいた
薄いスプリングコートに着替えて、冷たく暗い底から錨を上げる
別れを惜しむことなく景色は流れていく
なにかを落とした音がしても振り返らずに
下手くそな口笛を吹きながら
新しいものを受容して、潮風か花粉か、違和感のある目を擦って赤くする
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