帰る道/吉岡ペペロ
夜が明けるまえ車を出した
帰る道がわからなかった
なのにライトが道を照らしていた
タバコを求めるためだけに酒場にはいった
おととい加齢臭のおとこに7時間拘束された
むこうは義務や仕事でそうしているのだろう
喋ることもすぐに尽きたし退屈だったから疲れた
じぶんで水割りをつくった
暖炉のよこに座ってタバコを吸いながら一杯やった
ぼくのおんなはセーターから乳首が読みとれた
おんなはぼくに小学生みたいないたずらをしてきた
こころの余裕と無関心とでためいきをついてみた
そしてどちらもないと思った
余裕もないし無関心でもいられなかった
殺戮の夜に静けさがもどった
家はずいぶん荒らされていちぶは燃やされた
ぼくもおんなも汗だくで傷んだ服には他人の血がついていた
夜が明けるまえ車を出した
帰る道がわからなかった
なのにライトが道を照らしていた
タバコを求めるためだけに酒場にはいった
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