週の半ば頃/ヒヤシンス
銀色の雨が音もなく降っている。
テラス越しに見る常緑樹の緑は鮮やかで、
一日の予感は謎めいている。
雲に覆われた空は以前読んだロシア文学のようだ。
テラスに置かれた二脚の白い椅子はフランス文学。
放たれた葉巻の煙はさしずめアメリカ文学か。
窓から聞こえる誰かのハミングに耳を澄ますと
夢見がちな午後が頭をもたげる。
予感が現実に変わる瞬間の虚しさは散る桜のようだ。
予感は予感のままでいい。
生は死に向かってゆくが、死は謎のままがいい。
今日も私は生きている。
死は知らない。
謎は謎のままでいい。
我が道程を通り過ぎる度に今日は死んでゆく。
それでいいのだ。
しとしと降る雨にぼんやりと考える木曜の午後。
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