雑草嵐/片野晃司
 
いから。坂道の先はちいさな丘のてっぺんでいきどまりになる。夏になればまただれかが背中を踏みつけて坂道を登ってくる。雲が次々と折り重なって、やがて雨つぶが降り注いでくる。夏になればまただれかが登ってきて、なだらかな坂道はいきどまりになる。夏になればまただれかが坂道を登ってくる。忘れたい、忘れたい、そういう名前の蔓草でぎゅうぎゅうと息を苦しめるようになにもかも蔽いつくしてしまいたい。

夏になればまた背中がすこしあたたかくなって、寝返りからはじめて伸びををすれば舗装を割って、あくびをすれば草花が噴き出しきて、それからひとあばれして、めちゃめちゃに坂道を打ち砕いて、そうしてなにもかも忘れたことにして
[次のページ]
戻る   Point(11)