まなびや/田中修子
 
いつのまにか名前を忘れていて
出席番号だけになった

常緑樹はかわらなくて
花のにおいはかけている
校舎と門
息をするのがむずかしいような
薄い空だけ

水に飽和して粘液のような砂糖みずのなか
結晶の残る
とけきれない塩みず

呼ばれずに呼ばれたのは
みながなあなあにする
美術の時間

この中に名前を書かないで
課題を提出した人がいます
出席番号はただの記号です
名前にあなたの命がこもっています

そっか、私まだ
ここにいるんだったっけか

みんなが繭になりドロドロと溶け切っている
安いファンデーションにかえって赤い斑点が浮く

とがった体で
名前を呼んでくれる人を
ただ ただ
探していた

わたしのまなびや
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