ひぐらしの月/凛々椿
 
少しお酒に酔って
日も暮れて
ちょっぴりいい気分で天を降りあおいでみたら
月がたくさんありました
ああ、月だ
と思うとそれは
家庭の明かりに姿を変えます
狭い路地の
ひしめくマンションの上層階は
月の明るさのようでした
まあるく静かな
きれいなひかりたちです
あのひかりからは今ごろおいしい匂いとか
笑い合う声とか
ちいさな小競り合いとか
しているのかな
ひとつひとつの月明かりが
とても羨ましくて
妬ましくて

ちなみに本物の月は
真上にありました
うんと首を反らして見つけた月は欠けていて
滲んでいて
それでも美しく
でも
どのひかりとも違わぬひかりでした
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