剽窃/白島真
 
 剽窃したい人はそこに居て、夏のセロリをしっぽから齧っている。水は生温い 
 が金魚鉢の赤い魚たちは夢を追わずきょうも元気だ。猫は背を丸めしっぽりと
  寝ている。 
 猫を抱きしめる主体は私だが、猫は私に抱きしめられたとは思っていない。
 そのように、あなたは私の透けた静脈をみつめる。セロリをほとんど食べ尽く
  して。

 
 
 剽窃したい人はそこに居て、その時間には詩人たちの居場所がない。装飾さ
  れた言葉がない。
 ただひとつの椅子だけが用意され、永遠という名の木ねじははずされている。
 水溶性の欲望があなたの唇を濡らすとき、あなたは小さな叫
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