本能/鷲田
 
平然の感情を取り戻す道程は
岩盤の鋭角の上を歩く途方も無い日常
果てに向かう鳥の群れは本能のままに羽ばたき
生物学的な運命に従う他
有力な解決策はないことを自覚する

目の前にある獲物を無心に負う野生性は
不安と迷いをエネルギーに変える
弱き者、弱き者
それは私、あなた、彼、彼女
孤独に頷くことは他者と会話すること
コミュニケーションは怖さと同居する明るい光

断片的な日々は瞬間の連続的な風景画
何も語らないそのページとページが積み重なり
一つの物語を語りだす
その言葉は悲しくも今日のこの時には聞こえず
明るい未来への道筋は
何時も飛行機雲のように空の蒼さに儚くも消える
過去を振り返れる時のみ歴史は作られる

強き者、強き者
それは私、あなた、彼、彼女
廻り、廻り、削がれていく木片という臆病は
大地を走るライオンの群れのように
本能という間違いのない事実に導かれ
今日も地平線の彼方に疾走する
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