二月の空に/Lucy
凍てついた川面を蹴って舞い上がる
氷点下の風
丈高い建造物の隙間を吹き抜け
厳しく雪を吹き下ろしていた雲が
ため息ついて
気まぐれのように座を譲る
冬だけが見せる裸身の蒼穹
胸を開くと
分厚い雲も綿菓子のように優しく微笑む
それも束の間
空は再び瞼を閉じて
薄暗い視界は横殴りの吹雪に白く塞がれる
こびりついた白粉が
全身に風の方角を記憶させ
吹きさらしの街路樹は立ち尽くす
すべてなかったことのように
忘れ去られる雪解けまで
胸を震わせ目頭を熱くして恋い慕ったものが
ついに手に入らないのではなく
それを手に入れ胸にかき抱いたとたんに消えて
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