観覧車/カワグチタケシ
*
リンパのようにはりめぐらされた
首都の地下の冷えたレール
そのところどころが表皮をかすめ
夜になると光る花を咲かせる
昇ってしまえばあとは降りるだけ
観覧車は僕らをどこにも
連れていってはくれない
それでも僕らは切符の列に並ぶ
透明なアクリル板にあけられた
小さな穴から
上空の冷えた大気が流れ込む
首都の灯火は眠らずに
ふたりの記憶にまたたきつづける
海の上にだけ闇が訪れる
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三月、春霞を見おろして
僕らを乗せたゴンドラは熱を帯びる
孔雀の檻のとなりに
ジャングルジムが見える
四月、冷たい風が花びらを散らせる
雨に濡れた
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