希望について/カワグチタケシ
 

 深夜2時、数枚の年賀状を投函するために郵便ポストまで歩いていった。約300メートルのアスファルトの舗道。見上げると真黒に晴れた夜空に冬の星座が輝いている。今年もあとわずかで終わる。年が明ければすぐに、観覧車の足元に水仙の花が咲く季節がまた巡ってくる。
 私は観覧車の運転手。専門職といってもいいだろう。キャリアは10年。都内にある私立大学の法学部を出て地方公務員になった。決められた時間、区役所の窓口業務を淡々と正確にこなし、平日の夜と週末は小説を書いて新人賞に応募する。そんな暮らしを思い描いていた。しかし最初の配属は区立公園の管理事務所だった。
 河口をはさんで国際空港の対岸にある埋立地の
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