夢夜、二 「春祭りの日に」/田中修子
 
の春祭りの日にさらわれて帰らぬまま。私の子どもの婚約者は首をくくった。
 お前の家族、私の家族の呪い、そして祈り。お前にはすべてがかかっておる。さあ、外へ」
「長い間、ありがとうございました、師よ」

 私は礼をした。皺の深い師の顔がはじめてやさしくゆるむ。
 簪で、師の耳から脳にかけて貫いた。
 ゆっくりと崩れ落ちる師を深く抱きしめ、寝かせた。
 時が来たらそうする約束であった。白骨堂に、師の呪いも祈りも、はじめは腐敗しても、やがては白くなって眠ることだろう。されこうべは否応なく、深い笑みを浮かべていることだろう。

 白骨堂から、祭りの広場へ続く地下通路を通り、外への扉を開け
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