夢夜、二 「春祭りの日に」/田中修子
であった髪もよく梳かれて高く結われ、とりどりの簪が刺され、唇に紅を引かれる。老女が私の顔を両の手で包み、自分の命を注ぐような強い目で、私に告げた。
「時が来た、春祭りの時がきた。
お前の、陽に当たることが少ないから透き通るように澄んだ白い肌。そしてその凛として素晴らしい容姿。
王家は春祭りの日に空を掛ける牛車に乗って国中を巡り、春祭りに浮かれる美しい若者をさらい、王宮にて贅を尽くさせ、最後に血を吸って不死を保つという。
若者の少ないこの国で、お前は必ずや王家の贄に選ばれよう。
お前には私の全てを授けた。
この着物は私の子どもの夏の婚礼の衣装になるはずだったが、その前の春
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