夢の中で/佐藤守
 
町を散策しよう。池袋から目白へ。静かな通りを選ぼう。季節は春がいい。生暖かい風が吹くのが良い。曇り空の昼間が良い。僕は君と歩いている。君は誰だろう。分からない。でも君といるのは心地よい。

海にいこう。これ以上ないくらい強く青い空と海。夏がいい。沖縄の海。お父さんが笑って手を振っている。あんなに日焼けして。どれほど大切な時間だっただろう。

ここはどこだろう。ゆっくりと、しかしいつの間にか時間は流れ、季節は秋と冬を虚ろう。僕の手は枯葉で、触ったら朽ちてしまう。外は晴れているのに、時代は僕を置き去りにする。

君を失って久しい。いずれ君も同じように感じるだろう。誰もが僕たちを忘れてしまう。君を探そうとしたができなかった。僕は君を忘れてしまったんだ。
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