おなじになれない/末松 努
 
して
なにもないところに 再び文字が映る
復活した 元気が ここにあると
唾を飛ばし リポーターが 興奮している
ふりを している らしい
視聴者を 安心させようと したようだ
たしかに 彼らは その船には乗れる
しかし なにもないところに 幻影を語られても
その地の人には 船も来ず 乗ることができない

画面一枚の 彼岸と 此岸では
風景も 風も 香りも そして 人も
同じ思いを 抱きながら 語る言葉を おなじにできない

隔てることで 生活する人々に
切り裂いてもよい理が あるのか
染めてもよい 事実があるのか
それが 需要と供給 で片付けられるほど
彼らは 偉大なのか

削り取られた大地も 燃え尽きた土地も
あるのは それだけで 千差万別の思いは ひとことで くくれない
それでも 画面の狭さからか 誘導された文字が
テロップという権力で きょうも 迫っている
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