おなじになれない/末松 努
それが
ゆりかごであれば よかった
あるいは
護摩供養であれば よかった
起きること は
ときに
起こってしまうこと に
すり替えられ
溶けない涙が湧き出し
炎は風となり散りゆく
辛く 悲しく 痛い
その感情だけが残され
明けていく朝に 感謝できない
それを何と呼べばいいのか
誰も わからない
それなのに
名付けようとする 人たちがいる
画面に浮かび上がる 現象を固定する文字
そこにあるのが 唯一無二の 事実だと
視聴者の感情を乗せる船が いきなり現れ
海の向こう 何があるのかと 人々が乗り込む
あとのことは 誰も 知らない
しばらくして
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