夢夜、一 「灰色病と、花輪にうずもれるボルゾイの長い首」/田中修子
 
 細い細い青い糸のような雨がまっすぐに落ちていて、周りは湿り気をおびた青灰色の世界だった。
 私は巨大な石造りの、崩れ落ちかけた円形闘技場の、座るのにちょうどいい四角い石にちょこんと乗って、しめったい黒のレインコートで雨を防いでいる。
 白い巨大な犬たちが、目の前をかけぬけてゆく。私は白い犬たちの見送り人、たむけの色とりどりの花束や花輪を作っている。

 石造りの円形闘技場ではあるが、そのなかで闘士が金をかけられて殺し殺され合い、うらみの赤い血が流され、闘技場に染みついてきたのははるかはるか昔のこと。
 その次の平和な時代には、そこは市民劇場として利用されていた。きらびやかな衣装をまとっ
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