夜の水/為平 澪
夜、蛇口からボトボトと鉄板をたたく音がして 怖くて締める
私の内で溢れ出る苛立ちや不安、
皿を洗った後の 油や洗剤を含んだ水は
どこまで汚され どこに流れて行ったのだろう
じゃがいもの皮は 三角ポストに寝静まって
にんじんは 赤黒く収まって
茶袋は まだ温いまま膨れ上がって濡れている
それらが まだ遠くにない隅にあるという 小さな安心感を匂わせながら
私が洗って流した水は 予想もできない場所に行き
変わり、捩じり、くねり、曲り、踊り狂いながら
どの蛇口からひねり出された水であったのか、覚えていられないほど
汚水と混合して、また濁水にまみれ、汚染水と呼ばれ、色が臭う
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