二羽の白い鳥/田中修子
下弦の月から放たれたように
斜めに白い線が奔っていた
夜の飛行機雲
こんな時間帯に
ずいぶんと低空に飛ばしている
旅客機か
観測機だろうか、と、君がいって
わたしは感心してたちどまる
君の愛しいひとは
津波にのまれて消えてしまった
そうして君は炎に
飲みこまれ
狂って走って
死ぬように生きてきた
星のない都会のきらびやかな夜に続く
むなしいような朝の静けさ
途上国の死んだ魚の女の目
死を売りさばいて生きる人々
君はずいぶんと
かなしい物知りだ
ながいあいだわたしの世界は
わたしの中だけだった
夢の中をずいぶん旅したし
木や石
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