或る音/青の群れ
胎内の音は覚えていられないね
夜明けの前のカラスの声も
皮膚の下の七割の水は今も轟々と音を立てているというのに
わたしたちの耳は気づかない
潮で錆びた看板や港町の工場や
点在する小さな公園や酸素を吐き出す街路樹や
見えるものばかりを目は追いかけていたのに
JRが朝を運んできたことを目を閉じたまま知る
金属みたいに冷たくもないし
フェルトのように暖かくもないけれど
柔らかい胸に耳を押し付けて
聞こえた音に安心したいと思っているでしょう
線路に打ち付ける、大きなわかりやすい音も
聞こえないものは、ないものになるの?
地球、わたしたちには聞こえないような低
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