花の化石/白島真
 
もあり
 ひとりのこいびとのようでもあった
 少女は「あなた」とうつくしく呼ばれ
 少女もまた「あなた」と呼び返した

 いま、この地上の丘にいるのは
 少女をとおり過ぎたもうひとりの るりっ
 
 車の窓をあける るるっ るるっ
 入りこんだ風が黒髪を濃くする
 

 青空を見あげると
 少女のまぶしい悲鳴が すこし
 雲をゆらしたようだ

 あなたはすでに花の
 花の化石の
 あわい紋様を知りはじめている



*原口統三「二十歳のエチュード」より

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