花の化石/白島真
生きたまま花の化石になりたい
という少女がいて
街は、霞のようにかすかに
かそけく 輝いているのだった
ちちははの眠るやわらかな記憶の棺たち
少女は母似の瞼をとじた
人生を終えて新たな遊行の歩みを告げる釘の音
(釘もまたその命を灼熱の炎のなかで終える)
ちちははの顔を埋め尽くした花の来歴はわからない
街に立ち込める麝香(じゃこう)の匂い 牡鹿の内臓のすえた臭い
この街では、供花は不吉の徴とされ
ありとあらゆる哀しみの記憶は
過去へ未来へと作り変えられていった
月待草 ゲンソウノマチハ カナシミヲオキカ
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