千年の海/田中修子
 
 朝日が昇ります。夜の黒に近い藍色を押しのけ、宝石のように透き通った朝の赤が空を染めています。砂丘の色はまだ、黒。赤と黒のコントラストは、流れ出す傷とかたまったかさぶたのように美しい。つぎに瞬きすると、赤い空の端にブドウのような赤紫色がじんわりと滲みだし、やがて薄紫色から空色へ。
 砂丘も薄い黄土色にかわり、あちらこちらに満ちていた赤は、いつのまにかすべて消えてしまいました。
 私はほっと息を吐きます。真上に白熱した太陽が昇りきって、昼の砂漠です。黄土色の砂、黒や茶の岩石。あと一時間ほどで辿りつきましょう、目の前の砂丘の上で、キラ・キラと輝いているものがあります。私は数え切れないくらいの朝や夜
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