ラストダンス/青の群れ
軽やかに頭を垂れながら
逃避行の挨拶はこっそりと
カメラに背を向けた
二人きりのエレベーター
秘め事にもならないな
車のキーが揺れていた
流れていくフロアの景色
わたしたちは大丈夫だよと
口の中を柔らかく噛んだ
ひどく冷たい強い風が
背中を押したりひっぱったりする
戸惑う数だけ攫っていって
あのころの考え過ぎや
理不尽なその理由も
ほんとうはぜんぶ抱きしめたいだけ
まるで乱暴なセックスみたい
メンソレータムを塗りなおした唇に
張り付いた髪をはがす
体温だけを信じていれば
もう古い金属の匂いと交じる潮風で
鼻の奥がつんと痛くなることもな
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