part timer albatross/mizunomadoka
祖母の喫茶店では
スティックコーヒーを客に出す
食事のメニューは
近くのベトナム料理店のものだし
自慢の紅茶はどこか酸っぱい
ゲートボール日の店番は私
お客さんは足の悪い染吉さんだけ
「そめきちさん、コーヒーのおかわりは?」
「糖尿だからよ。日に一杯だ」
「砂糖抜きのもあるよ」
「なら飲む」
時計は10時42分
もうすぐ賑やかになる
カウンターのいなり寿司がいい匂い
水筒のコーヒーを温め直して
煮干しと一緒に持っていく
染吉さんはノラネコを膝に抱いて
詰め碁で唸ってる
窓の外は海とみかん畑
皮ごと丸ごと煮詰めて作る
この島のジャムが好き
山からチャイムがきこえる
月曜日の4時間目は全校体育
私のときからずっとそう
碁に飽きたネコが引き戸を開けてくれと鳴く
はいはいよっと甲斐甲斐しく走る
染吉さんは煮干しを噛んでる
マイクロバスが砂利道に入ってくる
午後から雨になりそうな雲
傘を忘れた魚たち
お昼を食べたら片付けをして
それから、それから
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