見つめる/ヒヤシンス
 

 忘れ去られた思い出を戸棚の中から取り出してじっと見つめる。
 淡い色に変色したノートや書籍。
 どこの国の物か分からない人形。
 出し忘れた葉書。時を刻まなくなった時計。

 遠い記憶は削除できない僕の履歴。
 幼い僕は窓辺に座り誰かの帰りを待っていた。
 窓の外は寂しいくらいの夕焼けで。
 その時僕は泣いたのだろうか。

 残酷で美しい記憶。
 消えない夢の通り道。
 自由を覆いつくす束縛。

 奏でる時にあの頃の夕焼けが蘇る。
 炎のように魂が鼓動する。
 内なる目が全てをじっと見つめる。
 
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